本日ハ雨後曇リ後晴天ナリ 

「それ、どうしたんでィ」


爽やかな青空の下。
向かいに腰を下ろし、2人の間に広げた新製品のお菓子の封を切っているの手に血が滲んでいるのを見つけた。
声につられ、俺の視線を追って手に目をやったは一瞬不思議そうな顔をして、直後、至極嫌そうに顔をしかめた。

   おいおい、なんでィその反応は・・・・・・。


「あー、・・・・・・怪我?」

「見りゃわからァ、どこでやったんでィ」

「・・・・・・・・・・・・さ、さあ?」


右手の甲、人差し指の下辺りに引っかいたような傷。
指摘されるまで気が付かなかったようで、本人はいたって無頓着。
でも一応心当たりはあるようだ。


「気が付かなかったんですかィ?もう年ですかねィ」

「うるさいなー・・・・・・きっとあの時のだー、あーやだやだ」

「あの時って?」

「なぁ、制服に血付いてね?」


しかしその心当たりを言いたくないのか、さり気なく話を逸らそうとしている。


「さぁ、見た感じ大丈夫そうですぜ」

「うん、スカート捲るのはやめろ。問題はスカートよりブラウスだから」


手に付いた血をなめ取りながら、聞いてくるの舌に目を奪われかけ、誤魔化すためにスカートを引き寄せると案の定怒られた。



***



「さっきさー、告られたんだよねー」


「はぁ!?」


一口サイズの大福を口に入れながら、「次の授業なんだっけー」くらいのノリでとんでもない事を言い出した。
思わず取り落とした大福を目ざとく見咎め、ビシッと指を指して「10秒ルール!」と叫ぶ。

10秒ルールって、ここ屋外なんだけど。
それを言うなら3秒だ。

声につられて急いで拾い、パタパタと粉を払う。

   確かに一瞬だったし、別に見た感じ汚れてねェし、粉叩きゃ大丈夫かねィ。

それ以前にの前でお菓子、それも和菓子を粗末にするわけにはいかない。


「さっきって?」

「だからさっき。ここに来る前にさー、誰だっけあのサッカー部のチャラついたヤツ」

「サッカー部のチャラ男・・・・・・ああ、あのB組の」

「ふーんそうなのか?」

「いや俺に聞かれても」


傷が気になるのか、時折舌で突付きながら、は少しずつさっきの話とやらを始めた。


「つーかそんな話聞いてねェんだけど」

「今言ってんじゃねーか」

「・・・・・・で、そいつがどうしてその怪我と結びつくんでィ。まさか何かされたのか?」




「いや、むしろあたしがした」

「は?」




の話によるとサッカー部のチャラついたヤツは、休み時間に彼女を呼び出し告白してきたらしい。
俺と付き合っているのを知っていながら。
自惚れでなく、俺以外の男は眼中にないは当然断った。
チャラ男は自分が振られるとは思っていなかったらしく、俺のことを始め、銀八を、3-Zをこき下ろし始め―――

「気がついたら殴り飛ばしてたんだよなー」

あっけらかんと言い放つ
身内を、自分を取り巻く環境をこの上なく大切にするは、良く知りもせずにそれらを否定する男が許せなかったのだろう。


「多分その時歯が当たったんだな」


そう言いながらまた、とうに出血は止まってピンクの皮膚を覗かせる傷口をペロッと舐めた。


「暴力沙汰はいただけませんねィ」

「キミが言うなよ」

「俺はいいんでィ―――」


ヒドく不愉快な事を思い付いた。


「ちょっ、何!?」


いきなり手を掴み、引き寄せる俺に驚いている間に、傷に舌を這わせる。
直前まで舐めてたの跡に、別の事を連想し、犬歯をそこに突き立てた。
痛みを訴える声がすると、口の中に血の味が広がる。


「テメェ何しやがる!」

「消毒」

「どこが!?せっかく血、止まってたのに―――」





に傷付けていいのは俺だけでィ」

名も知れないチャラ男の分際で、の触れるなんて。
が殴った事はこの際関係ない)


しかも「歯に当たった」って―――。


間接キスじゃねェか。



「サド」


そんな事、思い付きもしていないは嫌そうに顔をしかめる。


「何とでも言えィ―――こっちも消毒でさァ」









気付くな。
気付かなくて良い。

手の傷は俺が噛み付いて付けたモノ。

意識してないチャラ男の痕跡なんて跡形も無く消えてしまうように。



噛み付くようにキスをした。




後書戯言
will様リクエスト。
『総悟と授業中にサボって屋上でイチャこら。追伸ヒロイン』
ぶっちゃけ場所しかクリア出来てない_| ̄|○
3Zで追伸ヒロインは非常に難しかったです。
雨のち曇りのち晴天というより曇りのち雨のち嵐って感じですね。
晴れ間はどこ行ったんでしょうか。

ごめんなさいwill様。追伸ヒロインはイチャコラに向いてません。
07.02.23