他愛ない話をしよう
昼のバイト終了。
労働の後は甘い物に限る。
と、言うことで行き付けの団子屋さんでみたらし団子を買い、河川敷に向かう。
気候は良好。
傾いた夕日が綺麗だ。
河原の土手に、仰向けに寝そべって一つ二つと口に運ぶ。
もちもちとして、それでいて歯にくっつかないお団子と甘過ぎず辛過ぎない絶妙な味加減のタレ。
はや〜、幸せだ〜〜。
お茶が欲しい・・・・・・いやいや、贅沢は言っちゃいけないよ。
幸せに浸っていると、ふと夕日が陰った。
「?―――うおっ、エリザベス!?」
寝そべっていたあたしに音も無く忍び寄り、隣りに腰掛けていたのは真っ白な体にペンギンみたいな顔をした変な生物。
エリザベスという妙に優雅な名前の変なペンギンはじっとあたしを見つめる。
正確には、あたしの持つお団子を―――。
「えと・・・・・・食べる?」
勧めると、ペンギンの羽みたいな手で器用に1本取り上げた。
明らかに奥に突っ込みすぎだろう・・・・・・?
あ、中の人が食べてるのか。
「今日1人?ご主人様は?」
「ご主人様ではない、桂だ」
「!?・・・・・・なんで2人とも気配を消して近付いて来るの?」
いつの間にか、エリザベスとは反対隣りに専らヅラと名高い優男が座っていた。
サラサラの長い黒髪がそよ風になびく。
「俺には団子は勧めてくれないのか?」
「ちょっと図々しいんじゃないですか」
「ふむ、満月堂か。はここの団子が好きなのか」
「ってもう食ってるし!」
「まあそう怒るな。おや、こんな所にお茶が」
ひたすら ごーいんぐまいうぇい を貫く指名手配犯は、怒るあたしにおもむろに懐から缶のお茶を取り出した。
「わーい!ありがとう、ヅラさん!!」
「ヅラじゃない桂だ」
「カツラさん」
「桂だ!」
「言ってるじゃん」
「そっちじゃない。その発音は明らかにヅラ寄りだ」
「はいはい。エリザベス、もう一本いかが?」
「シカトとはいい度胸だな」
エリザベスは無言でその白い手を伸ばす。
この得体の知れない宇宙生物はしゃべらない。
まあ、中にはドスの効いた声を聞いたことがあるって言う人もいるけどあたしは聞いた事がない。
桂さんにも仕方が無いからもう1つ勧めてあげる。
遠慮という言葉を知らない1人と1匹は、躊躇う事無くお団子を口に運ぶ。
あたしが大量に買い込んでるのを知ってるんだ・・・・・・っ
「カツラに反応するのは心当たりがあるからですか?」
「ち が う!!俺のサラサラキューティクルは紛れも無く本物だ」
「うわっ!ムカつく!!あたしがクセっ毛を気にしているの知っててそういう事言うの?エリザベス、こんな飼い主捨てて家においでよ。一緒に遊園地で働こう!」
『是非喜んで』
「エリザベスゥゥゥ!!??」