数日前に通った道を再び歩く。
あのときは2人の間にあったチャリは今日は駐輪場に置きっぱなし。宣言どおり、人気のない通学路を手を繋いで歩く。
無造作に預けられた手はひんやりと冷たくて、でもほのかに暖かい。いわゆる恋人つなぎでは無いけど、他人の体温を不快と思わない自分が新鮮だった。
と、人が感動しているというのに、しばらく行くと繋いだ手がもぞもぞと動き始めた。
「何してんでィ」
そっと隣を見下ろすと、が妙な顔をして手を解こうとしていた。
「・・・・・・手」
「んあ?―――繋いでやすねィ」
「汗ばんでる」
予想外の台詞に思わず手を振り解く。しまった と思っても後の祭り。気まずさと共に視線を上げると驚いて見開かれた目と合った。もともと早くなかった歩みも止まっている。
怯えるように立ちすくむ様子に罪悪感を覚えるが、そもそもこいつはいま恐ろしく失礼なことを言った気がする。例え事実でも人と人とが関わるに際して言ってはいけない類の指摘をした気がする。
「・・・・・・私の、気持ち悪いから、やめて、って・・・・・・」
風でも吹けばかき消させれてしまいそうな声で搾り出されたのはそんな言葉で。
「私の」ってのが?
「別に、全然気になりやせんでしたぜ?」
「・・・・・・」
俺のが、じゃないなら構わないと離した手をもう一度取ろうとするが、ご丁寧に鞄を持ち替えることで阻止された。
***
「・・・・・・上がってく?」
会話も無く、手も繋げず、黙々と歩みを進めてたどり着いた家。
この前も思ったが中々立派な家だ。
疑問系で答えておきながらは俺の返事を待たずに鍵を開け、扉を開いた。誘ってくれたということは、入ってもいいということだろう。
社交辞令を言うようなヤツには見えない。というより、コイツは著しくコミュニケーションというものが下手なのではないかと思う。俺も人のことは言えないが。
招いておいて、俺を待つ気はないらしいの背を急いで追いかけた。
***
「おかえりなさい、ちゃん。今日はちゃんと学校行ったのね〜」
「・・・・・・ただいま」
玄関を通ってびっくり。ちょうど家事の途中だったのだろう、エプロン姿の女性に出迎えられた。
「あら?お客さん?」
「うん」
「沖田総悟といいやす。はじめまして」
「あらあら―――の母です。ちゃん、上がっていただくの?」
「うん」
「じゃあお菓子の用意をしなくちゃ。総悟くん、紅茶はお好き?」
「あ、はい」
「じゃあ用意するわね―――ってちゃん、お客様置いてさっさとあがらないの」
いつまでも玄関で挨拶を交わす俺たちを置いて、靴を脱いだはさっさと階段を上がっていってしまった。俺はあまりにもあんまりな、不思議なペースに飲まれて戸惑いを隠せない。
「ごめんなさいね、総悟くん。あの子マイペースでしょう?ささ、上がってくださいな」
「え、あ・・・・・・お邪魔します」
一瞬、帰ろうかという思いが頭を過ぎったがそれには従わず、わざわざ出してくれたスリッパに足を通した。