「去年は何組だったんで?」
「C組」
「1年の時は?」
「・・・・・・うーん・・・・・・A組、かな?」
思えば今年までお互いの存在さえ知らなかったわけで、共通の話題なんて大雑把な学校の話題しかない。
まずは基礎知識を、と思い当たり障りのない質問を投げる。
「なんでんな自信なさ気なんでィ」
「だって自信無いもん」
会話というより事情聴取みたいだ。
「つーか見事に転落の人生歩んでんなァ」
「そう?」
「もしかしてZ組になったのが嫌で登校拒否ですかィ?」
「いや、登校拒否してたらZ組になっちゃった感じ」
「ああ・・・・・・そりゃ残念でしたねィ」
「別に行かなきゃどこのクラスでも一緒だし」
投げやりな答えに会話が止まる。なんとなく気まずくなって手の中のカップに視線を落とす。
そろそろ昼のドラマの再放送の時間だ。
はドラマなんか見るのだろうか。
・・・・・・見ないだろうな。
「総悟は?何組だったの?」
微妙な間の後、同じ質問が返された。多少は俺に興味を持ってくれたのだろうか。
「1年の時からずっとZ組でさァ」
「・・・・・・それはなんというか。御愁傷様?」
「失礼なヤツだなァ。過ごしてみれば楽ですぜ。なんてったって担任が銀八だからなァ」
「銀ちゃん・・・・・・」
「え?」
ボソッと呟かれた担任の愛称を、俺は聞き逃さなかった。
「お前ェ銀八と仲いいの?」
「別に」
別にってことはないだろう。
銀ちゃんなんて馴れ馴れしい呼び方、クラスでもあのチャイナしかしないというのに。
不自然な呼び名を問いただそうとしたとき、玄関の開く音がした。
◇◇◇
ガタンと音を立てて、が立ち上がった。
当然の母親だと思っていた玄関の音の主は意外すぎる人物だった。
「晋、助・・・・・・」
呆然とつぶやく声に思わずそちらに目を移すと、は蒼白とも言える顔色で立ちすくんでいた。
高杉晋助。
言わずと知れた3Zのド不良だ。
そんなヤツと登校拒否児のに一体なんの接点があるというのだろう。
廊下から居間へと続く扉を開け放った高杉は室内を見渡し、俺とを目に留めると、皮肉たっぷりな微笑を浮かべた。
「なんだァ、。新しい男か?」
「・・・・・・」
「黙ってんなよ。どうやって引っ掛けたんだ?」
「・・・・・・別に」
「・・・・・・今度は何日続くか見物だな」