初めてを見たのは、とある事件現場。焼け落ちた武家屋敷の一角に座敷わらしのようにしゃがみ込んでいた幼児を見つけたのだ。
◇
子供を懐柔するには食べ物が一番だろう。
というか、むさくるしい男ばっかりの屯所には他に子供の興味を引けるようなものがない。
そしてあいにく俺の部屋にはお菓子の類の買い置きも置いていなかった。
「よし、食堂行きがてら屯所の中探検でさァ」
大人しく最初に下ろした座布団の上で正座をしていた子供の脇に腕を挿しいれ、持ち上げる。その体重はこれが同じ人間かと信じられないほど軽い。
突然持ち上げられたは、特に抵抗は見せず、両手を所在無さ気に胸の辺りで握り締め、歩調に揺られるままになっている。話しかけるでなく、こっそり様子を伺うと、難しい顔をして固まっていた。
ちょっと周りを観察している様子はない。
まずは、近藤さん。
「ほら、。この人がゴリ・・・・・・いや近藤さん?でさァ。ここで一番偉い人だからゴリラとか言ったらダメですぜ?」
「え、突然何その紹介。なんで近藤さん?なにそのはてな。いらないよそれ。一点の曇りもなく近藤さんだよ!」
「ごり」
「おしい!違ェやす」
「惜しくない!」
「ごりら?」
「ちょ、総悟くん?なんか近藤さん鼻の奥がツーンとしてきた。なんかわさび食べた時みたいになってきた!」
「・・・・・・こんどーさん」
「―――っ!?」
「―――いい子でさァ」
は、はっきり近藤さんのゴリ顔に怯えていた。
屯所に置く許可を取るため、一度顔を合わせていたというのに、やはりそうそう慣れるものではないのだろうか。
それでも、舌っ足らずながらもきちんと名前を呼んだに、感動のあまり言葉を忘れた近藤さんが奇声を発して飛び掛ってくる前に、その場を後にした。
よく言えました、と1つ頭を撫でてやると、腕の中から不思議そうな視線が返ってきた。