07.いつまでそうしているつもり?
に目覚める気配は無い。
早く話がしたい。
彼女がいた世界の話も聞きたいし、なぜ自分がこんなに彼女を気にかけているのか、その正体を知りたい。
遠目に見た景色にあれ程驚いていた彼女が、実際に街に出たらどんな反応をするのか楽しみだ。
でも仕事をサボるとまた土方さんがうるさい。
普段なら気にしないが、眠っている彼女の側でドンパチやるのは気が引ける。
枕元に簡単な朝飯と、書き置きを残し、彼女を起こさない様、そっと部屋から出た。
適当に見回りを済ませ、再び部屋に戻ると、全てが出かける前と同じ状態で残っていた。
の寝姿までが出かける前と全く一緒で、一瞬死んでるのではないかと心配になった。
いくらなんでも寝過ぎだろィ。
なぜ自分がこんなに彼女の事を気にかけるのかわからない。
ただ、刀を突き付けた時恐怖に見開いた瞳が、江戸の街やターミナルに目を奪われた様子が、取り乱す事無く冷静に現状に対処しようとしている姿が、健気で、痛々しくて、放って置けなかった。
全く、らしくないにも程がある。
土方さんが極端に疑ってるっていうのも肩入れしたくなる要因かもしれないが。
昏々と眠り続けるを見ていたら、俺まで眠くなって来た。
眠り続けるの布団に頭を預け、昼寝の体勢を取る。
そういえば、×ゲーム2回分、何をさせようかと考えながら。
***
「総悟ォォオ、テメェどこ行ったァァアア!!!」
見回りが終わり、屯所に戻った途端姿を眩ませた総悟を探し回る。
あいつは集中力を持続させるという事が出来ないのか?
「オイ総悟っ――――――!」
総悟の部屋の襖を撥ね開ける。
そして未だに眠り続けると、それに寄り掛かって眠る総悟の姿に一瞬言葉を失った。
初対面に近い女の隣りで熟睡しているコイツの神経を疑う。
一体何がコイツにここまで信用させるのか。
頭が空な分、動物的本能で動く総悟はもっと警戒心が強かったはずだ。
「オイ起きろ」
珍しくアイマスク無しで昼寝をしている総悟の脇腹を蹴って起こす。
「痛ェでさァ・・・・・・何すんでィ」
「お前が何してんだ。仕事中だコラ」
「いいじゃないですかィ。俺ァ土方さんがさんをあんまり疑うんで何ごとも無いよう見張ってるだけですぜ」
「オメェ、爆睡してたじゃねーか!」
「それだけこの人の側は安全って事でさァ」
「・・・・・・ったく、コイツずっと眠ったままなのか?」
起きた気配が全くない。
寝相がいいのか、長時間眠り続けている割にあまり乱れた様子のない布団。
そしてなぜか枕元にはいびつな形の米の塊が並んでいた。
「総悟・・・・・・その米の塊はなんだ?」
「お握りでさァ。目が覚めたら腹が減ってると思って」
「・・・・・・お前が作ったのか?」
「そうですが、何か文句ありやすか?」
「いや・・・・・・」
一体どうしちまったんだ?
こんなに面倒見の良い総悟は未だかつて見た事がない。
天変地異の前ぶれか?
明日は蝗の大発生か?
「何でもいいから仕事に戻―――って何食ってんだよ!」
「そういえば、俺昼飯まだだった」
もごもごと自分で作った握り飯(?)を頬張る総悟に、やっぱり気のせいだったかと思い直した。
コイツに人の面倒をみるのは無理だ。