13.君が選ぶのは
まずは着替えだろうと言う事で、目指すは婦人服売り場。
総悟くんの言うとおり、開店直後の店内は空いていた。
当たり前の様に隣りでああだこうだと選ぶ2人に違和感を覚えつつ、何とかして動きやすいコーディネートを捻る。
やはり踝まである様な着物が一般的だけど中にはすごいミニとか、忍者ルックとか、その種類は多種多様。
合わせようによったらそれなりに動きやすくできそう。
「さん、これなんかいいと思いやす」
フラッといなくなった総悟くんの手にあるのはふんわりしたエプロンドレス。
エプロンの下が着物の合わせになっているのがまた中途半端。
ご丁寧にヘッドドレス付。
「メイドは嫌」
「なんででィ。女中なんてメイドみたいなもんだィ」
「動きにくいでしょうが。そんなヒラヒラした服で30人以上のご飯を作れと?掃除洗濯をこなせと?ていうかその服で買い出しに行けと?」
家事は力仕事なんですよ?
んな男どもの目を潤すための服に実用性なんて存在しない。
「じゃあこっちはどう?」
「山崎さん・・・・・・私の話し聞いてました?」
次に差し出されたのは・・・・・・男どもの憧れ、白衣の天使のお召し物。
「はい。隊では怪我は日常茶飯事だから、是非ともこれ着て手当てなんかして貰えると「そんなの絶対着ませんからね」
「じゃあ「もう勘弁してください」
入れ替わりに総悟くんがもって来たのは、どう考えても宴会の悪ふざけ用としか思えないウサギコスプレ一式。
バニーガールじゃない事に安心するべきか?
え、私の希望をどう聞いたらこんなものが出て来るの?
明らかに頭の悪い2人を適当にあしらい、自分で服を選んだ。
異常に疲れたのは気の所為では無いはず。
いつまでも合わないとダメだしを食らった着物でいるのも嫌だったのでその場で着替えさせてもらった。
丈の短い着物に、それだけでは心許無いから膝までのスパッツを履き足下は編み上げブーツで固める。
屯所は土禁だった気がするけどね。
着物は、振り袖タイプでは引火する恐れがあるので思い切って袖なしにし、アームウォーマーを着ける。
今は丁度梅雨入り前らしいから、冬まではこれで過ごせるだろう。
帯の結び方も店員さんに教えて貰ってばっちり。
次は下着かな?
「あの、下着コーナー行ってきますんで2人はそこのベンチででも待ってて下さい」
「あ、うん。そうだね」
「ついて行ってあげまさァ」
「「はっ!?」」
いやいやいや、下着売り場だって言ってるでしょ!?
「いくら総悟くんが女顔だからってそれはさすがに無理っていうか私が嫌」
「何さり気なく失礼なこと言ってんですかィ。山崎ィ、ここで荷物番してろ」
「はあ」
「いや、はあじゃないから。え、下着だよ?迷子とか心配ないし、選んで貰うこともないし」
私の抗議の声も虚しく、ずるずると下着売り場に引き摺られていく。
明るい照明に照らされたパステルカラーの一角が近づいてくる。
どうしてこの男の足取りにはなんの躊躇いもないのでしょう?
「支払いはどうすんですかィ?」
「あ、じゃあ大体の予算渡して貰えます?」
「アンタ貨幣の数え方分かるんですかィ?」
「うーん、じゃあ決まったら呼ぶんで」
「んなの二度手間になるからいやですぜ」
「ちょっと総悟くんわがままにも程がありますよ」
「わがままはさんの方でさァ。罰ゲームだと思って我慢しなせィ」
は?
罰ゲームってこんなトコで使うの!?