34.からみ、からまれ
「ちゃん結構飲むね」
「そうですか?うちの家系は酒豪ぞろいなんであんま分かんないですけど」
「だって周り潰れだしてるし」
周囲を見渡すと死屍累々。
食べ散らかった料理にまみれて隊士と酒瓶が転がっている。
まだまだ元気な人もいるけど。
「・・・・・・確かに。でも山崎さんも強いね」
一通り挨拶回りを終えた私は一番落ち着いていた監察班の所に落ち着いていた。
監察班の人たちは山崎さんと同じくらい、もしくはそれ以上に存在感が無く、気がつけば2人で一升瓶を挟んで向き合っていた。
「まあ俺の場合は役職柄」
「そうなの?」
「監察が酔いつぶれちゃダメでしょ。人は酒と伽の席では口が軽くなるからね」
こ、こわっ
にっこり事も無げに吐いたセリフに、普段どんな仕事をしているか見えた気がした。
「ーー、なぁんで山崎とばっか仲良くしてんでーィ。そんなんと飲んでっと地味が移るぜィ」
ずしっと背中に負荷がかかる。
背後に忍び寄ってきた総悟くんの頭が肩口にグリグリと押し付けられ、アルコールの匂いがキツく漂う。
「総悟くん、重い」
「さん、相手してくだせィよぉ」
「あーあー、沖田隊長飲み過ぎですよ!」
「うっせージミ崎死ね」
「ジミ崎って誰だよ!山崎だよ!」
「さぁん、ジミィがいじめる・・・・・・」
「ちょ、そ、総悟くん!?」
酔いで舌っ足らずになった総悟くんは普段からは信じられないほど子供っぽい。甘え上戸だ。後ろから腰に手を回し、ぎゅぅっと苦しいほどに抱きしめてくる。
その行動や、甘えたように訴えてくる口調も可愛いのに、普段を知っている分そのギャップが怖い。人の体を抱きしめながら、山崎さんに「死ね」と言う声色などいつもどおりで怖すぎる。
「ほら、ちゃんも困ってるじゃないですか!」
「なんでィ、山崎のくせに馴れ馴れしいんでさァ。さんと呼べ。空気C」
「空気ってなんだぁぁあ!?しかもCって何だよ!せめてAにしてくださいよ!」
「まあまあ、相手は酔っ払いですから、落ち着いてください空気Aさん」
「ちゃん・・・・・・希望を聞いてくれたのは嬉しいけど、できれば空気のところから改めて欲しかったよ」
「あら」
口論を続けながらズルズルと引き摺られ、座布団から落されいつの間にか山崎さんと距離が出来ている。
「さぁん、酌してくだせィよぉ・・・・・・空気Yばっかりずるいでさァ」
「総悟くん、ホントに飲みすぎだよ・・・・・・」
空気Aがもの凄く出世している。Yは山崎のYだろうか?
「アンタは全然素面じゃねェかィ。ダメでさァ・・・新入りが歓迎会で潰れねェなんて士道不覚悟でさァ。切腹でさァ」
「ちょ、潰れてないことを褒められるならまだしも、そんな理由で切腹なんて出来ません。てか切腹なんて怖いこと出来るわけないじゃないですか」
「じゃあ、飲みなせィ」